📋 この記事のポイント
多汗症の原因は何?多汗症は原発性と続発性の2種類に分類され、それぞれ異なるメカニズムや原因疾患が関与しています。専門医が多汗症の種類と発汗メカニズム、主な原因疾患、薬剤性多汗症について詳しく解説します。
- ✓ 多汗症は全身性または局所性に過剰な発汗が見られる状態で、原因により原発性多汗症と続発性多汗症に分類されます。
- ✓ 原発性多汗症は特定の原因が特定できない特発性のもので、遺伝的要因や自律神経の関与が示唆されています。
- ✓ 続発性多汗症は基礎疾患や薬剤が原因で起こり、原因疾患の治療が重要です。
多汗症とは?その定義と主な分類

多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて過剰な発汗が見られる状態を指します。この症状は、日常生活に大きな支障をきたすことがあり、精神的な苦痛を伴うことも少なくありません。多汗症は、その原因によって大きく「原発性多汗症」と「続発性多汗症」の2種類に分類されます。
臨床の現場では、特に若い患者さまから「汗が止まらない」「人前で恥ずかしい」といった相談をよく受けます。多汗症は単なる体質ではなく、適切な診断と治療が必要な医学的状態であると理解することが重要です。
多汗症のメカニズム:なぜ汗は過剰に出るのか?
発汗は体温調節の重要な機能であり、自律神経系によって制御されています。汗腺は主にエクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、多汗症で問題となるのは主にエクリン腺からの発汗です[4]。エクリン腺は全身に分布し、特に手のひら、足の裏、脇の下、顔面などに多く存在します。これらの汗腺は、交感神経によって支配されており、アセチルコリンという神経伝達物質によって刺激されます。
多汗症の患者さまでは、この交感神経の活動が過剰になることで、必要以上の発汗が引き起こされると考えられています。しかし、その根本的な原因はまだ完全に解明されていません[2]。
- エクリン腺
- 全身に分布し、主に体温調節のために水分の多いサラサラした汗を分泌する汗腺。多汗症の主な原因となる。
- アポクリン腺
- 脇の下や陰部などに分布し、タンパク質や脂質を含む粘り気のある汗を分泌する汗腺。体臭(ワキガ)の原因となることが多い。
原発性多汗症の原因とは?
原発性多汗症は、特定の基礎疾患や薬剤によるものではなく、原因が特定できない多汗症を指します。これは多汗症全体の約90%を占めると言われています[1]。主な特徴として、以下の点が挙げられます。
- 局所性発汗: 手のひら、足の裏、脇の下、顔面、頭部などに限局して過剰な発汗が見られることが多いです。
- 左右対称性: ほとんどの場合、左右対称に発汗します。
- 睡眠中の発汗停止: 睡眠中は発汗が止まるのが一般的です。
- 発症年齢: 思春期以前に発症することが多く、特に学童期から青年期にかけて顕著になる傾向があります。
- 遺伝的要因: 家族歴があるケースも多く、遺伝的な関与が示唆されています[2]。当院では「親も汗っかきだった」という患者さまが多くいらっしゃいます。
原発性多汗症の正確な原因は不明ですが、交感神経系の過活動が関与していると考えられています[4]。ストレスや不安などの精神的な要因が発汗を誘発・悪化させることも知られていますが、これらは多汗症の「原因」ではなく「誘因」と捉えるべきです。
原発性多汗症は生命に直接関わる疾患ではありませんが、生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があります。早期の診断と適切な治療介入が、患者さまの負担軽減につながります。
多汗症の原因と種類:続発性多汗症の詳細

多汗症は、その原因によって大きく二つに分けられますが、ここでは特定の疾患や薬剤が原因で引き起こされる「続発性多汗症」について詳しく解説します。続発性多汗症は、原発性多汗症とは異なり、その根本原因を特定し、治療することで改善が期待できる点が特徴です。
臨床の現場では、多汗を訴える患者さまに対し、まずは続発性多汗症の可能性を慎重に検討します。特に、急な発症や全身性の発汗、睡眠中の発汗といった症状が見られる場合は、基礎疾患の有無を詳しく確認するようにしています。
続発性多汗症を引き起こす主な疾患とは?
続発性多汗症は、様々な全身性疾患の症状の一つとして現れることがあります。これらの疾患を適切に診断し、治療することが、多汗症の改善に直結します。主な原因疾患には以下のようなものがあります。
- 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンの過剰分泌により、代謝が亢進し、体温が上昇しやすくなるため、全身性の発汗が見られます。動悸、体重減少、手の震えなどの症状を伴うことが多いです。
- 糖尿病: 特に低血糖発作の際に、交感神経が活性化され、冷や汗をかくことがあります。また、糖尿病性神経障害によって発汗機能が異常をきたすこともあります[5]。
- 褐色細胞腫: 副腎髄質からカテコールアミンが過剰に分泌される腫瘍で、高血圧、動悸、頭痛とともに、全身性の激しい発汗を引き起こします。
- 結核などの感染症: 発熱を伴う感染症では、解熱期に大量の寝汗をかくことがあります。
- 悪性腫瘍(リンパ腫など): 一部の悪性腫瘍では、発熱や体重減少とともに、夜間の寝汗が特徴的な症状として現れることがあります。
- 神経疾患: パーキンソン病や脳卒中後遺症など、自律神経の調節に異常をきたす神経疾患でも多汗が見られることがあります[5]。
- 更年期障害: ホルモンバランスの乱れにより、ホットフラッシュとともに発汗が増加することがあります。
薬剤性多汗症:服用中の薬が原因になることはあるか?
はい、特定の薬剤の副作用として多汗症が引き起こされることがあります。これを薬剤性多汗症と呼びます。薬剤性多汗症は、服用している薬を中止したり、別の薬に変更したりすることで改善が見られる場合があります。主な原因薬剤としては、以下のようなものが挙げられます。
- 抗うつ薬: 特に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬の一部で、発汗の副作用が報告されています。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs): 一部のNSAIDsでも発汗増加の報告があります。
- 降圧薬: カルシウム拮抗薬など、一部の降圧薬も発汗を増やすことがあります。
- 血糖降下薬: インスリンや一部の経口血糖降下薬は、低血糖を引き起こし、その結果として発汗を誘発することがあります。
薬剤性多汗症が疑われる場合は、自己判断で薬の服用を中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。当院では、患者さまの服薬歴を詳細に確認し、多汗症の原因が薬剤によるものでないかを慎重に判断しています。
続発性多汗症と原発性多汗症の見分け方は?
続発性多汗症と原発性多汗症を区別することは、適切な治療方針を立てる上で非常に重要です。両者の主な違いを以下の表にまとめました。
| 項目 | 原発性多汗症 | 続発性多汗症 |
|---|---|---|
| 発症時期 | 思春期以前に発症することが多い | 成人期以降に急に発症することが多い |
| 発汗部位 | 手のひら、足の裏、脇の下、顔面など局所的・左右対称性 | 全身性であることが多い、または非対称性 |
| 睡眠中の発汗 | 睡眠中は発汗が止まる | 睡眠中も発汗が見られることがある(寝汗) |
| 随伴症状 | 特になし(精神的ストレスは誘因) | 体重減少、動悸、発熱、倦怠感など基礎疾患の症状 |
| 原因 | 不明(遺伝的要因、自律神経の過活動が示唆) | 基礎疾患(甲状腺機能亢進症など)や薬剤 |
これらの特徴を総合的に判断し、必要に応じて血液検査や画像診断などの精密検査を行うことで、正確な診断へと繋げます。多汗症でお悩みの方は、まずは医療機関を受診し、ご自身の多汗症がどちらのタイプに当てはまるのかを診断してもらうことが大切です。
まとめ

多汗症は、体温調節に必要な量を超えて過剰な発汗が見られる状態であり、その原因によって「原発性多汗症」と「続発性多汗症」に大別されます。原発性多汗症は、特定の原因が特定できない特発性の多汗症で、主に手のひら、足の裏、脇の下、顔面などに左右対称性の発汗が見られ、睡眠中は発汗が止まるのが特徴です。遺伝的要因や自律神経の過活動が関与していると考えられています。
一方、続発性多汗症は、甲状腺機能亢進症、糖尿病、褐色細胞腫などの基礎疾患や、特定の薬剤の副作用として引き起こされます。このタイプでは、全身性の発汗や睡眠中の発汗が見られることがあり、基礎疾患の治療や薬剤の調整が多汗症の改善に繋がります。多汗症の適切な診断と治療のためには、ご自身の症状がどちらのタイプに当てはまるのかを医療機関で正確に診断してもらうことが重要です。
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- Shiri Nawrocki, Jisun Cha. The etiology, diagnosis, and management of hyperhidrosis: A comprehensive review: Etiology and clinical work-up.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2020. PMID: 30710604. DOI: 10.1016/j.jaad.2018.12.071
- Moshe Hashmonai, Alan E P Cameron, Cliff P Connery et al.. The Etiology of Primary Hyperhidrosis: A Systematic Review.. Clinical autonomic research : official journal of the Clinical Autonomic Research Society. 2018. PMID: 28823102. DOI: 10.1007/s10286-017-0456-0
- Marlous L Grijsen, Esther J van Zuuren. Gustatory Hyperhidrosis.. JAMA dermatology. 2022. PMID: 34668927. DOI: 10.1001/jamadermatol.2021.3303
- Christoph H Schick. Pathophysiology of Hyperhidrosis.. Thoracic surgery clinics. 2016. PMID: 27692196. DOI: 10.1016/j.thorsurg.2016.06.002
- William P Cheshire. Sudomotor Dysfunction.. Seminars in neurology. 2021. PMID: 32906168. DOI: 10.1055/s-0040-1713847
- オビソート(アセチルコリン)添付文書(JAPIC)