エピナスチンとは?
エピナスチン(Epinastine)は、第2世代抗ヒスタミン薬の一種で、アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・皮膚炎・結膜炎などのアレルギー症状を抑えるために使用されます。抗ヒスタミン作用に加えて、抗アレルギー作用を併せ持ち、ヒスタミンH₁受容体の遮断だけでなく、炎症を抑える効果も期待できます。
エピナスチンの主な剤形:
- 経口薬(アレジオン錠など):アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・皮膚炎
- 点眼薬(アレジオン点眼液など):アレルギー性結膜炎
- 外用薬(アレジオン眼瞼クリームなど):まぶたのかゆみ・皮膚炎
エピナスチンの効果
- アレルギー性鼻炎の改善(花粉症・通年性アレルギー)
- 蕁麻疹や皮膚炎によるかゆみの軽減
- アレルギー性結膜炎の症状抑制(目のかゆみ・充血の軽減)
- 鼻水・くしゃみ・鼻づまりの緩和
エピナスチンは、ヒスタミンH₁受容体を遮断することでアレルギー症状を抑えつつ、肥満細胞からの炎症性物質の放出を抑制する作用もあり、抗アレルギー薬として広く使用されています。
効果発現までの時間と持続時間
- 経口薬(錠剤・シロップ):服用後約1時間で効果が現れ、持続時間は24時間。
- 点眼薬:点眼後10分以内にかゆみの軽減が始まり、約8〜12時間持続。
- 外用薬(眼瞼クリーム):30分〜1時間で皮膚の炎症やかゆみが軽減し、長時間持続。
経口薬は1日1回の服用で効果が持続するため、服薬管理がしやすい点が特徴です。
エピナスチンの用法・用量
経口薬(アレジオン錠)
- 成人・12歳以上:1回20mgを1日1回就寝前に服用
- 7〜11歳の小児:1回10mgを1日1回就寝前に服用
- 2〜6歳の小児:1回5mg(シロップ)を1日1回就寝前に服用
点眼薬(アレジオン点眼液)
- 1日2回(朝・夕)、両眼に1滴ずつ点眼
外用薬(アレジオン眼瞼クリーム)
- 1日2回(朝・夜)、まぶたのかゆみがある部分に適量を塗布
臨床成績
国内第Ⅱ相試験(前期)
通年性アレルギー性鼻炎患者183例を対象とし、エピナスチン塩酸塩5mg、10mg、20mgを1日1回、2週間投与した試験において、10mgおよび20mgの投与群で有用性が認められました。
投与群 | 有効例数/効果判定例数 | 有効率(中等度改善以上) |
---|---|---|
エピナスチン 10mg・20mg | 42/99 | 42.4% |
副作用発現率は1.7%(2/116例)で、主な副作用として全身倦怠感(0.9%)、発疹(0.9%)が報告されました。
国内第Ⅱ相試験(後期)
通年性アレルギー性鼻炎患者194例を対象に、エピナスチン塩酸塩10mgまたは20mgを1日1回、2週間投与した二重盲検試験において、10mg以上の投与量で有用性が認められました。
投与群 | 有効例数/効果判定例数 | 有効率(中等度改善以上) |
---|---|---|
エピナスチン 10mg・20mg | 63/149 | 42.3% |
副作用発現率は5.4%(10/184例)で、主な副作用として眠気(1.6%)、頭痛(1.1%)、呼吸困難、口内乾燥、嘔気、むかつき、胃痛、皮疹、手掌の皮むけ、タンパク尿(各0.5%)が報告されました。
国内第Ⅲ相試験(比較試験)
通年性アレルギー性鼻炎患者222例を対象に、エピナスチン塩酸塩10mg(1日1回)またはアゼラスチン1mg(1日2回)を2週間投与した二重盲検比較試験の結果、エピナスチン10mgの有用性が確認されました。
投与群 | 有効例数/効果判定例数 | 有効率(中等度改善以上) |
---|---|---|
エピナスチン 10mg | 47/94 | 50.0% |
副作用発現率は7.8%(8/102例)で、主な副作用として眠気(3.9%)、頭痛、口渇、胃部不快感、下痢、じん麻疹(各1.0%)が報告されました。
国内第Ⅲ相試験(長期投与試験①)
通年性アレルギー性鼻炎患者38例を対象に、エピナスチン塩酸塩10mgまたは20mgを1日1回、8週間以上投与した試験で、有用性が認められました。
投与群 | 有効例数/効果判定例数 | 有効率(中等度改善以上) |
---|---|---|
エピナスチン 10mg・20mg | 26/38 | 68.4% |
副作用発現率は2.6%(1/38例)で、発疹(2.6%)が報告されました。
国内第Ⅲ相試験(長期投与試験②)
通年性アレルギー性鼻炎患者31例を対象に、エピナスチン塩酸塩10mgを1日1回、4週間以上投与した試験で、有用性が認められました。
投与群 | 有効例数/効果判定例数 | 有効率(中等度改善以上) |
---|---|---|
エピナスチン 10mg | 17/29 | 58.6% |
副作用発現率は3.2%(1/31例)で、眠気(3.2%)が報告されました。
使用時の注意点
- 眠気が少ないですが、運転前には注意してください。第2世代抗ヒスタミン薬のため、眠気の副作用は比較的少ないですが、運転や集中を要する作業前の服用は慎重にしてください。
- 1日1回で効果が持続します。寝る前に服用することで、翌日のアレルギー症状を抑えることができます。
- 腎機能が低下している場合は、用量調整が必要です。高齢者や腎機能障害のある方は、医師と相談の上、適切な用量を決めることが推奨されます。
- 点眼薬・外用薬は、一時的な使用にとどめてください。目のかゆみや皮膚炎の治療に使用する場合は、長期使用を避け、症状が改善したら使用を中止してください。
副作用
エピナスチンは比較的安全な薬ですが、以下の副作用が報告されています。
- 眠気(特に初期使用時)
- 口の渇き・胃部不快感
- 点眼薬使用時の一時的な刺激感
- 皮膚クリーム使用時の軽度のかゆみや赤み
副作用が持続する場合や強く現れる場合は、医師に相談してください。
他の抗ヒスタミン薬との比較
薬剤名 | 主な効果 | 持続時間 | 眠気 | 投与頻度 |
---|---|---|---|---|
エピナスチン(アレジオン) | 鼻炎・蕁麻疹・結膜炎 | 24時間 | 少ない | 1日1回 |
フェキソフェナジン(アレグラ) | 鼻炎・蕁麻疹 | 24時間 | 非常に少ない | 1日1回 |
ロラタジン(クラリチン) | 鼻炎・蕁麻疹 | 24時間 | ほぼなし | 1日1回 |
セチリジン(ジルテック) | 鼻炎・皮膚炎・蕁麻疹 | 24時間 | あり | 1日1回 |
クロルフェニラミン(ポララミン) | 強力な抗アレルギー作用 | 6〜12時間 | 多い | 1日2〜3回 |
エピナスチンは、抗アレルギー作用が強く、眠気が少ないため、日常生活に影響を与えにくい点が特徴です。
まとめ
- 花粉症・蕁麻疹・結膜炎に効果を発揮
- 眠気が少なく、日中の活動に影響を与えにくい
- 1日1回の服用で持続的な効果
- 点眼薬・外用薬もあり、用途に応じて使い分け可能
- 腎機能が低下している場合は医師と相談の上使用
エピナスチンは、抗アレルギー作用に優れ、眠気が少ないため、仕事や勉強に支障をきたしたくない方に適した選択肢となります。