ヘパリン類似物質とは
ヘパリン類似物質は、皮膚の保湿や血行促進、抗炎症作用を持つ医療用医薬品です。人の肝臓で生成される糖類の一種「ヘパリン」に似た構造を持ち、高い親水性と保水性による持続的な保湿効果が特徴です。皮膚の乾燥を防ぐだけでなく、血液の流れを促進し、炎症を抑える働きもあります。
元々は重度の乾燥肌や皮脂欠乏症の治療を目的として使用されていましたが、現在ではスキンケア目的でも広く使用されています。乾燥肌の予防・治療だけでなく、アトピー性皮膚炎やしもやけ、角化症などの治療にも用いられることがあります。
ヘパリン類似物質の効果・効能
ヘパリン類似物質には、主に3つの作用があります。
保湿作用
肌の水分を保持し、乾燥を防ぐ効果があります。皮膚のバリア機能を高めることで、外部刺激から肌を守る働きも期待できます。特に、アトピー性皮膚炎や乾燥肌の治療に有効とされています。
血行促進作用
皮膚の血流を改善し、新陳代謝を活発にします。これにより、肌のターンオーバーが正常化し、皮膚の修復が促進されます。血流が滞りがちな冷え性やしもやけにも効果が期待できます。
抗炎症作用
炎症を抑える効果があり、湿疹や皮膚炎の症状を緩和します。肌荒れが起こりやすい方や、皮膚の赤みが気になる方にも適しています。
ヘパリン類似物質の使用方法
通常、1日1回から数回、適量を患部に塗布します。使用する量に特に制限はありませんが、皮膚の状態や患部の広さに応じて調整します。
皮膚が乾燥しやすい方は、入浴後の肌がまだ湿っている状態で塗布することで、より高い保湿効果が得られます。また、強くこすりすぎず、やさしくなじませるように塗るのがポイントです。
目や口の周りなどの粘膜部分には使用しないよう注意し、顔に使用する場合は薄く塗るようにしましょう。
ヘパリン類似物質の種類
ヘパリン類似物質にはさまざまな剤形があり、使用部位や症状に応じて選択されます。それぞれの特徴を理解し、適切なものを使用することが重要です。
クリーム
皮膚への浸透が良く、高い保湿効果があります。比較的刺激が少なく、伸びが良いのが特徴で、乾燥がひどい部位やひび割れしやすい部分に適しています。
ローション
乳剤性ローションと水溶性ローションの2種類があり、広範囲に塗布しやすいという利点があります。特に、頭皮など毛が生えている部位にも使用しやすい形状です。ただし、クリームに比べると保湿力はやや劣ります。
フォーム
泡タイプで伸びがよく、軽い使用感が特徴です。油分をほとんど含まないため、さっぱりとした塗り心地で、べたつきが気になる方に向いています。
スプレー
ローションと同じ成分を含み、スプレータイプで広範囲に塗布できます。手を使わずに使用できるため、手が届きにくい背中などにも便利です。
剤形による効果の違いはほとんどなく、使用感や塗布のしやすさに応じて選択するのが良いでしょう。
ヘパリン類似物質の副作用
ヘパリン類似物質は副作用が少ない医薬品ですが、まれに以下のような症状が現れることがあります。
主な副作用
- 皮膚炎(かぶれ、かゆみ、発赤)
- 軽度の刺激感やかさつき
- 皮膚の投与部位に紫斑が生じることがある
副作用が見られた場合は、すぐに使用を中止し、医師に相談してください。
ヘパリン類似物質が使用できない方
以下の方は使用を避ける必要があります。
- 血友病、血小板減少症、紫斑病などの血液疾患がある方
- 軽い出血でも重大な影響を及ぼす可能性がある方
これらの疾患をお持ちの方は、事前に医師と相談の上、適切な治療を受けることが推奨されます。
ヘパリン類似物質の臨床試験結果
皮脂欠乏症患者54例、進行性指掌角皮症患者27例を対象に、ヘパリン類似物質ローション0.3%を1日2~3回、皮脂欠乏症では2週間、進行性指掌角皮症では4週間塗布した試験が行われました。
試験結果
- 皮膚の乾燥や炎症が大幅に軽減され、高い改善率を示した
- 副作用は認められず、安全性が確認された
この結果から、ヘパリン類似物質は皮膚の乾燥や炎症の治療に有効であり、長期的に使用しても問題の少ない医薬品であることがわかります。
よくある質問(FAQ)
ヘパリン類似物質は妊婦や授乳婦も使用できますか?
妊娠中の安全性は完全に確立されていませんが、これまでに胎児への影響は報告されていません。医師の指示を受けた上で使用するのが望ましいでしょう。
顔にも使えますか?
顔にも使用可能ですが、目や口の周りの粘膜には使用しないよう注意してください。適量をやさしくなじませることで、肌の乾燥を防ぎ、トラブルを予防できます。
ヒルドイドとの違いは?
ヘパリン類似物質の先発医薬品が「ヒルドイド」、後発医薬品が「ヘパリン類似物質クリーム」です。成分や効果に大きな違いはなく、どちらを使用しても同等の保湿効果が期待できます。
まとめ
ヘパリン類似物質は、保湿・血行促進・抗炎症作用を持つ医療用医薬品であり、乾燥肌や血流障害の改善に広く使用されています。クリーム、ローション、フォーム、スプレーなどの剤形があり、使用部位や症状に応じて選択できます。副作用は少ないものの、皮膚炎やかゆみが生じた場合は使用を中止し、医師に相談しましょう。
参考文献
- 帝国製薬株式会社「ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%インタビューフォーム」
- ニプロ株式会社「ヘパリン類似物質クリーム0,3%/ローション0,3%インタビューフォーム」
- 東亜薬品株式会社「ヘパリン類似物質添付文書」