ミノキシジルとは
ミノキシジルは、元々高血圧治療薬として開発された医薬品ですが、後に副作用として多毛が認められたため、AGA(男性型脱毛症)の治療薬として使用されるようになりました。現在では、外用薬と内服薬の2つの形態で利用されています。
ミノキシジルの作用機序
ミノキシジルは、血管を拡張して毛包への血流を改善し、毛周期の成長期を延長することで、毛髪の成長を促進します。これにより、薄毛部分の毛髪が増え、健康な髪の成長が期待できます。
ミノキシジルとフィナステリド・デュタステリドの効果の違い
項目 | ミノキシジル | フィナステリド | デュタステリド |
---|---|---|---|
作用機序 | 血管を拡張し、毛包に栄養を供給、発毛を促進 | 5αリダクターゼII型を阻害し、DHTの生成を抑える | 5αリダクターゼのI型・II型の両方を阻害し、DHT抑制 |
効果 | 髪の成長を促進し、薄毛部分に新しい毛を生やす | 脱毛の進行を遅らせ、新たな髪の成長を促す | 脱毛の進行を強力に抑制し、広範囲で髪の成長を促進 |
効果が確認される部位 | 頭皮全体、特に頭頂部 | 主に頭頂部や前頭部の薄毛 | 頭頂部および前頭部の薄毛 |
服用/使用方法 | 外用薬、または経口薬 | 経口薬(1日1回、1mg) | 経口薬(1日1回、0.5mg) |
効果が出るまでの期間 | 4〜6ヶ月で発毛効果が確認されることが多い | 3〜6ヶ月で効果が現れることが多い | 6ヶ月程度で効果が確認されることが多い |
副作用 | 頭皮のかゆみ、炎症、まれに低血圧など | 性欲減退、勃起不全、抑うつ感 | 性欲減退、勃起不全、抑うつ感、頭痛、めまいなど |
このように、ミノキシジルは外用薬として血流を促進する一方、フィナステリドとデュタステリドはDHTを抑制する内服薬であり、効果の範囲や副作用に違いがあります。
ミノキシジル外用薬
効果
ミノキシジル外用薬は、頭皮に直接塗布するタイプで、2%や5%の濃度の製品が用いられます。日本皮膚科学会のガイドラインでも、5%のミノキシジル外用薬が強く推奨されています。臨床試験では、5%ミノキシジルを使用したグループで有意に髪の毛の増加が確認されています。
使用方法と効果の出現
外用薬は1日2回の使用が推奨されており、6ヶ月程度の継続使用で効果が見られることが多いです。短期間の使用では効果が限定的なため、定期的な使用が重要です。
副作用
- かゆみ
- 紅斑(赤み)
- 毛包炎(毛穴の炎症)
- 接触皮膚炎
- 落屑(皮膚のフケ状の剥がれ)
- 顔面の多毛
初期脱毛について
ミノキシジル外用薬の初期段階では、初期脱毛と呼ばれる一時的な抜け毛が発生することがあります。これは髪の成長サイクルが整う過程で見られるものであり、発毛の前兆です。初期脱毛が起きても、治療を継続することが重要です。
ミノキシジル内服薬
効果
ミノキシジル内服薬は、もともと高血圧の治療薬として開発されましたが、AGA治療薬としての有効性も確認されています。2022年の研究では、ミノキシジル5mg内服がAGA治療に有用であるとの結果が発表されています。外用薬が忍容できない患者に対する代替療法としても使用されることがあります。
使用方法
ミノキシジル内服薬は、1日1回の服用で済むため、外用薬よりも利便性が高いという利点があります。
副作用
- 多毛症(全身の体毛が濃くなる)
- 胸痛
- 動悸
- 息切れ
- むくみ
内服薬と外用薬の推奨度の違いについて
日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインでは、ミノキシジル外用薬は推奨度Aとして強く推奨されていますが、内服薬は推奨度Dとして使用すべきでないとされています。理由は、内服薬に対する臨床試験が実施されていないためです。
しかし、2022年の研究では、ミノキシジル5mg内服薬の有用性が確認され、外用薬に比べ1日1回の服用で効果が得られる利点があるとされています。外用薬が適さない患者への代替療法として推奨されています。
このことから当院では、デュタステリドとフィナステリドと同様にミノキシジル内服もAGA治療にとって重要であると考え、当院のAGA治療プランの中でも、ミノキシジル内服を含んだプランをおすすめしています。
ミノキシジルについてのよくある質問
女性でも使用できますか?
ミノキシジルは女性でも使用可能です。当院の場合、女性の場合は抜け毛防止にスピロノラクトンを使用しつつ、ミノキシジルを併用することが多いです。
円形脱毛症にも効果がありますか?
ミノキシジルは円形脱毛症にも効果が認められています。最新の研究によれば、ミノキシジルを使用した患者の63%以上で何らかの改善が確認されました。特に次の点が注目されます。
外用ミノキシジル単独療法:
755人の患者を対象とした研究では、57%の患者に改善が見られ、対照群と比較して統計的に有意な結果が得られました。
内服ミノキシジル単独療法:
89人を対象にした研究では、32人(約36%)に改善が見られましたが、サンプル数が少ないため統計的な有意性は確認されていません。
内服ミノキシジルとJAK阻害薬の併用療法:
101人の患者を対象に行われた研究では、86人(約85%)に改善が見られ、平均で86.7%のSALTスコア(脱毛の程度を示す指標)の減少が確認されました。
これらの結果から、ミノキシジルは円形脱毛症の治療において有望な補助療法であることがわかります。特に、JAK阻害薬との併用により高い効果が期待できるようです。
参考文献
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- Gupta AK, Charrette A: Topical minoxidil: Systematic review and meta-analysis of its efficacy in androgenetic alopecia, Skinmed, 2015; 13: 185-189.(レベルI)
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- Randolph M., et al., Oral minoxidil treatment for hair loss: A review of efficacy and safety., J Am Acad Dermatol, 2020
- Aditya K. Gupta, MD, PhD , et al., Relative Efficacy of Minoxidil and the 5-α Reductase Inhibitors in Androgenetic Alopecia Treatment of Male Patients , 2022
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
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