ヤーズフレックス配合錠とは
ヤーズフレックス配合錠は低用量ピルの一種で、主に子宮内膜症の疼痛の改善や月経困難症の治療目的で使用されます。
当院ではヤーズフレックス配合錠を保険診療で取り扱っております。
基本情報
対象疾患・症状
ヤーズフレックスは主に子宮内膜症の疼痛の改善や月経困難症に用いられます。避妊目的として作られている低用量ピルよりもエストロゲンが少なく配合されているため、避妊目的では使われません。
何世代のピルか
ヤーズフレックスはドロスピレノンという種類の黄体ホルモンが配合されており、第四世代のピルです。超低用量ピル(LEP)とも呼ばれており、ニキビやむくみなどの副作用が起こりにくいのが特徴です。また子宮内膜症や月経困難症の場合は保険適用で処方可能という点もメリットとなるでしょう。
先発品・後発品
ヤーズフレックスの後発品(ジェネリック)は現在時点でございません。
ヤーズとの違い
似た名称のピルに「ヤーズ」があります。ヤーズも有効成分が同じ超低用量ピルですが、承認されている効能や効果、用法や用量、1シートの錠剤構成が異なります。
具体的には、ヤーズの適応は月経困難症のみなのに対し、ヤーズフレックスは月経困難症と子宮内膜症に適応があります。
また、ヤーズは1シート28錠のうち24錠が実薬、4錠が偽薬ですが、ヤーズフレックスは28錠すべて実薬となっている点も違います。これによって服用方法にも違いがあるのです。
詳しくは製造元のバイエル薬品から出ている情報をご覧ください。
参考:バイエル薬品「ヤーズフレックスフレックス®︎配合錠またはヤーズフレックス®︎配合錠の「一般名処方」による取り違え防止へのご協力のお願い」
ヤーズフレックスの「フレックス」とは
ヤーズフレックスは2017年に日本で初めて発売された低用量ピルですが、「フレックス投与法」に沿ったピルとなっています。
フレックス投与法は「生理の回数をできるだけ減らす」というものです。従来のピルは21日間服用後に7日間の休薬期間を取るサイクルですが、これだと休薬期間中に消退出血が起こるので生理自体は月1回ペースで来ます。一般的にはピルの作用により生理痛が軽くなるのですが、重度の月経困難性や子宮内膜症の場合はそれでも辛い場合があります。
そこで、生理の回数を減らすことで辛さを軽減できるのがフレックス投与法になります。ヤーズフレックスは最大で120日間継続が可能となっており、年間の生理回数を3回程度まで減らすことができるのです。
ただし、出血が3日間連続で発生した場合は休薬してリセットが必要になるため、全員が120日間継続できるというわけではありません。それでも他のピルよりは生理の頻度を減らすことができるという点でメリットがあります。
効果・効能
ヤーズフレックスは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの作用により排卵を起こすためのホルモン分泌を抑制して排卵を起こさない作用があります。
さらに、子宮内膜が厚くなるのを防ぐことで子宮内膜で産生される痛みの原因となる物質「プロスタグランジン」を減少させ、子宮内膜症や月経困難症による痛みなどの症状を緩和します。
子宮内膜症は腹膜や腸管にも子宮内膜ができてしまう病気で、生理のたびにお腹で出血してしまい痛みを感じます。ヤーズフレックスは長期間出血を起こさないようにできるため、子宮内膜症に伴う疼痛に対して適応のある薬となっています。
ヤーズフレックス配合錠の服用方法
ヤーズフレックスは「28錠シート」です。28錠すべてが実薬となっています。1日1錠を服用し、最長120日まで服用を毎日継続できます。ただし、25日目以降に3日間連続で出血があらわれた場合、もしくは120日継続して服用した場合には、その翌日から4日間休薬する必要があります。
用法・用量に関する注意点
- 毎日一定の時刻に服用してください
- 月経の第1日目から飲み始めてください
- 休薬期間は4日間を超えないでください
ヤーズフレックス配合錠の副作用
主な副作用
頭痛、性器出血、不規則な子宮出血、月経痛、下腹部痛、悪心、凝固検査異常、プラスミノーゲン上昇、トロンビン・アンチトロンビン3複合体上昇、月経過多、機能性子宮出血などが報告されています。このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
重大な副作用
- 血栓症
下肢の急激な疼痛・腫脹、息切れ、胸痛、頭痛、四肢の脱力や麻痺、構語障害、視力障害などが見られた場合は直ちに投与を中止し、医師の診察を受けてください。 - アナフィラキシー
呼吸困難や蕁麻疹、血管浮腫、そう痒感などが見られた場合は投与を中止して適切な処置を行ってください。
服用に際して注意すべきこと
- 避妊目的では使用しないでください。
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方は必ず医師に伝えてください。
ヤーズフレックス配合錠の臨床成績
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈子宮内膜症に伴う疼痛の改善〉
17.1.1 国内第Ⅲ相比較試験
子宮内膜症患者(最大124日周期群:平均35.7歳、22~47歳、プラセボ群:平均35.3歳、20~49歳)を対象とし、プラセボ対照二重盲検及び実薬(ジエノゲスト)対照非盲検の比較試験を実施した。有効性についてはプラセボを対照とし、最も高度な骨盤痛を視覚的アナログスケール(VAS)を用いて評価した。最も高度な骨盤痛について、投与前から投与開始後17~24週までのVAS値の変化量(平均値±標準偏差)は、最大124日周期群(114例)で-36.6±23.9mm、プラセボ群(117例)で-10.7±18.0mmであった。群間差の最小二乗平均値[95%信頼区間]は-26.3mm[-31.6mm、-20.9mm]であり、最大124日周期群のプラセボ群に対する優越性が示された[片側p<0.0001、投与群及びベースライン観察期におけるVAS(60mm未満、60mm以上)を固定効果とした分散分析]。
副作用(臨床検査値異常を含む)は241例中151例(62.7%)に認められた。主な副作用の発現例数(発現率)は、性器出血59例(24.5%)、プラスミノーゲン上昇32例(13.3%)、不正子宮出血29例(12.0%)、悪心25例(10.4%)等であった。
よくある質問
他のピルからヤーズフレックスに切り替える場合はどのようにしたらいいですか?
- 休薬期間があるピルから切り替える場合
は、休薬期間の翌日からヤーズフレックスを飲み始めてください。 - プラセボ(偽薬)があるピルから切り替える場合
プラセボ(偽薬)を飲み終わった翌日からヤーズフレックスを飲み始めてください。
ヤーズフレックスを飲み忘れた場合はどうしたらいいですか?
飲み忘れに気づいたタイミングによって対応が異なります。下記を参考にしてください。
- 前日の飲み忘れに気付いた場合
直ちに前日の飲み忘れた錠剤を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用してください。 - 2日以上服薬を忘れた場合
気付いた時点で前日分の1錠を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用し、その後は当初の服薬スケジュールどおり服用を継続してください。
ヤーズフレックスは太ると聞いたのですが本当ですか?
ヤーズフレックスの添付文書には、副作用として体重増加や痤瘡(ニキビ)が報告されています。第四世代の低用量ピルであり、副作用発現の頻度は低いですが、特に飲みはじめの時期はホルモンバランスの変化によって副作用が起こりやすいことがあります。個人差が大きいため、継続的に体重増加やニキビが気になる場合は医師に相談してください。