フィナステリドとは
フィナステリドは、男性型脱毛症(AGA)の治療に使用される医薬品で、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制し、脱毛の進行を遅らせる効果があります。DHTはAGAの主要な原因とされており、その生成を抑えることが治療のポイントです。フィナステリドの先発品であるプロペシアは2005年に日本で承認され、広く使用されています。
フィナステリドの作用機序と効果
フィナステリドは、5α-リダクターゼII型を阻害してDHTの生成を抑制します。これにより、毛髪の成長が促され、脱毛の進行が遅れます。臨床試験では、1年間の服用で約50%以上の患者に効果が確認されており、最低でも1年間の継続服用が推奨されます。
フィナステリドとデュタステリドの効果の違い
フィナステリドは抜け毛を抑える薬ですが、同様の効果を持つ薬にデュタステリドがあります。デュタステリドはザガーロのジェネリック医薬品で、当院でも取り扱いがございます。
項目 | フィナステリド | デュタステリド |
---|---|---|
作用機序 | 5αリダクターゼのII型を阻害し、DHTの生成を抑える | 5αリダクターゼのI型とII型の両方を阻害し、DHTの生成を抑える |
効果 | 脱毛の進行を遅らせ、新たな髪の成長を促す | 脱毛の進行をより強力に抑制し、より広範囲で髪の成長を促進 |
使用部位 | 頭頂部の薄毛に効果が高い | 頭頂部だけでなく、前頭部の薄毛にも効果が確認されている |
服用方法 | 1日1回、経口薬(1mg) | 1日1回、経口薬(0.5mg) |
副作用 | 性欲減退、勃起不全、抑うつ感 | 性欲減退、勃起不全、抑うつ感、頭痛、めまいなどの可能性 |
フィナステリドとデュタステリドでは、デュタステリドのほうが効果は強いとされています。しかし、その分副作用が強かったり、値段が高いというデメリットもあるため、軽度の抜け毛や予防観点でAGA治療を開始する場合はフィナステリドから始めるのが良いでしょう。
フィナステリドとミノキシジルの効果の違い
プロペシアとミノキシジルは、共にAGA治療薬として広く使われていますが、作用機序や効果の違いがあります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
項目 | フィナステリド | ミノキシジル |
---|---|---|
作用機序 | DHTの生成を抑え、脱毛を防ぐ | 血管を拡張し、毛包に栄養を供給する |
効果 | 脱毛の進行を遅らせ、新たな髪の成長を促すこともある | 髪の成長を促進し、薄毛部分に新しい毛を生やす |
使用部位 | 主に頭頂部や前頭部の薄毛に効果がある | 頭皮全体で効果が確認されている |
服用方法 | 経口薬(錠剤) | 外用薬(塗布液)や経口薬 |
副作用 | 性欲減退、勃起不全、抑うつ感 | 頭皮のかゆみ、炎症、まれに低血圧や心拍数の変化 |
フィナステリドとミノキシジルの併用
フィナステリドとミノキシジルは作用機序が異なるため、併用が推奨される場合もあります。これにより、AGA治療の効果がさらに高まる可能性があります。ただし、併用する場合も医師の指導のもとで行うことが重要です。
フィナステリドとミノキシジルの併用による治療例
当院でもフィナステリドとミノキシジルの併用により薄毛が改善した事例がございます。
※ここに田後さんの症例写真
フィナステリドの服用で抜け毛を抑えつつ、ミノキシジルの発毛効果で見た目でもわかるほどに改善しています。すでに薄くなっている場合ではミノキシジルの併用がおすすめです。
フィナステリドの副作用
フィナステリドには副作用が報告されていますが、発現率は低いです。服用を続ける中で副作用が現れた場合は、医師に相談することが推奨されます。
主な副作用
- 性機能障害: 性欲減退、勃起不全、射精障害
- 精神的影響: 抑うつ感、気分の落ち込み
- 皮膚症状: 発疹、かゆみ
- 消化器症状: 腹痛、下痢
- 乳房の異常: 女性化乳房、乳房の痛み
- 全身症状: 倦怠感、疲労感
重大な副作用
- 肝機能障害: 肝臓の数値の悪化(AST、ALTの上昇)
- アレルギー反応: 顔や唇の腫れ
フィナステリドの服用時の注意点
フィナステリドは、成人男性が1日1回1錠服用します。定期的な健康チェックを行い、特に肝機能に問題がないかを確認することが推奨されます。また、妊婦や未成年が触れないように厳重に管理する必要があります。妊娠中の女性が接触すると、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
フィナステリドはプロペシアのジェネリック医薬品
フィナステリドの先発品はプロペシアというお薬で、効果は同一ですが価格が安く続けやすいというメリットがあります。AGA治療は継続が重要なため、ジェネリック医薬品を活用して若いうちから治療する方が増えています。当院でもフィナステリドを処方しております。
フィナステリドの個人輸入について
価格が安いため、フィナステリドを個人輸入で購入するケースがありますが、安全性の観点からは推奨されません。個人輸入された医薬品は、有効成分の量が記載通りでない場合や、そもそも有効成分が含まれていない場合があります。また、副作用が出た場合でも、国内で承認されていない薬では医療救済制度が適用されないため、リスクが大きいです。
フィナステリドの臨床成績
国内第II/III相二重盲検比較試験
- 対象: 20〜50歳の男性型脱毛症患者414名(Norwood-Hamilton分類II〜V)
- 投与期間: 48週間
- 結果:0.2mg群: 改善率54.2%1mg群: 改善率58.3%プラセボ群: 改善率5.9%主な副作用: リビドー減退1.1%、勃起機能不全0.7%
国内長期投与試験
- 対象: 374名に1mgを48週間投与(96週間にわたる試験)
- 結果: 有効性が維持され、副作用の発現率は1.1%
よくある質問
服用後、どのくらいで効果が見られますか?
通常、6ヶ月程度の服用で効果が見られることが多いです。ただし、個人差があり、早い方だと3ヶ月程度で効果を実感する場合もあります。
肝機能に悪影響があると聞きましたが、本当ですか?
重大な副作用として肝機能障害が報告されていますが、頻度は非常に稀です。長期的な服用が肝臓に負担をかけることがあるため、心配な場合は定期的に血液検査を受け、肝機能の状態を確認することが推奨されます。
保険診療で対応できますか?
フィナステリドによるAGA治療は、保険適応外の自費診療となります。
参考文献
- Price VH,et al., J Am Acad Dermatol., 43, 768-76, (2000)
- Guess HA,et al., J Urol., 155, 3-9, (1996)
- McConnell JD,et al., N Engl J Med., 349, 2387-98, (2003)
- McConnell JD,et al., N Engl J Med., 338, 557-63, (1998)
- Thompson IM,et al., N Engl J Med., 349, 215-24, (2003)
- Theoret MR,et al., N Engl J Med., 365, 97-9, (2011)
- Prahalada S,et al., Teratology., 55, 119-31, (1997)
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」