低用量ピルとは?種類・効果・副作用を徹底解説|避妊・生理痛改善に役立つ情報

低用量ピルとは

低用量ピルには避妊目的のピルと月経困難症や子宮内膜症の治療目的のピルの2種類があります。月経困難症や子宮内膜症の治療の場合は保険適用で処方が可能です。

避妊用の低用量ピル(OC)

Oral Contraceptives(経口避妊薬)からOCと呼ばれます。数十年前のピルは配合されているホルモン量が多く、避妊効果もあるが副作用も強いというものでした。それが現在は避妊効果を得られる最低限度までホルモン量を調整してあるため、副作用が少なくなっています。正しく服用すればほぼ確実に避妊効果が得られます。当院では下記を取り扱っています。

生理痛緩和の低用量ピル(LEP)

Low dose Estrogen Progestin(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)からLEPと呼ばれます。成分自体はOCと変わりませんが、こちらは月経困難症や子宮内膜症の治療目的であれば保険適用になります。当院では下記を取り扱っています。

低用量ピルが身体にどう作用するか

月経の流れ

まず女性の月経について簡単に説明します。

排卵は脳下垂体と卵巣のホルモンが連動して起こるもので、体内で卵子が発育するにつれてエストロゲン(卵胞ホルモン)が放出されます。そして十分な量になると排卵が起こり、その後はプロゲステロン(黄体ホルモン)が放出され、妊娠に適した子宮内膜に変化していきます。妊娠に至らなければ、排卵日から10日前後で子宮内膜が剥がれ落ちるようになっています。これが月経の流れです。

ピルによって脳が勘違いする

さて、ピルにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類が配合されています。これを内服することで、脳が「排卵が終わった状態」と勘違いし、卵子を発育するホルモンの放出をストップします。これによって卵子が育たない、エストロゲンもプロゲステロンも出ない、子宮内膜が肥厚しないという状態になり、結果として避妊や生理痛の緩和に繋がります。

低用量ピルの効果

上述した低用量ピルの作用から、下記のような効果が期待できます。

避妊

排卵が抑制されるため、受精する卵子がなく妊娠に繋がりません。また、子宮内膜も妊娠しにくい状態になります。さらに、子宮頸管の粘液も変化させるため、子宮内に精子が入りにくくなります。

月経困難症

子宮内膜が厚くなるのを防ぐことで子宮内膜で産生される痛みの原因となる物質「プロスタグランジン」を減少させ、月経困難症の緩和に繋がります。

子宮内膜症

子宮内膜症は子宮内膜またはそれに似た組織が何らかの原因で、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患です。女性ホルモンの影響で子宮外で増殖するものの、剥がれ落ちることもないので激しい痛みに繋がります。

ピルの服用によって子宮内膜が厚くなることを防げるため、痛みの緩和につながります。

月経前症候群(PMS)

PMSの原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンの波が原因と言われています。低用量ピルを服用することでホルモンバランスが安定するため、PMSの症状も緩和されるとされています。

生理周期の改善

月経不順はホルモンバランスの乱れによるものが多いですが、これも低用量ピルを服用することでホルモンバランスが安定し、改善が期待できます。

肌荒れの改善

黄体ホルモンには皮脂の分泌を促進する効果があり、月経によって黄体ホルモンの分泌量が増えると毛穴づまりなどが起こりやすい状態になります。低用量ピルによって黄体ホルモンの分泌量を安定させることで肌荒れの改善にも繋がります。

卵巣がんのリスク低減

排卵は女性の身体にとってストレスであり、卵巣がんの原因の一つと考えられています。

現代は晩婚化や子供を持たない選択をする方も増えてきており、生涯での月経回数が昔より多くなっているため、その分卵巣がんのリスクも高まっています。ピルによって月経回数を抑えることで将来的な卵巣がんのリスク低減に繋がります。

低用量ピルの種類

低用量ピルには一相性と三相性の2種類に分けられます。通常の人体では、まずエストロゲンが増加し、排卵後にプロゲステロンが増加するというタイムラグがあります。これを考慮した設計になっているかどうかが一相性と三相性の違いです。

一相性

一相性は21錠の実薬に含まれるホルモン量がすべて一定になっています。避妊効果や生理痛の緩和、PMS改善については三相性と同等の効果が期待できます。一相性は生理間の期間をコントロールしやすく、例えばヤーズフレックスは月経回数を最大で年3回に減らすことができます。

三相性

三相性は21錠の実薬に含まれているホルモン量が3段階に分かれており、より自然な状態に近いホルモン変化となっています。避妊効果や生理痛の緩和、PMS改善については一相性と同等の効果が期待できますが、さらに三相性の場合は不正出血が起こりにくくなるとされています。

低用量ピルの世代

低用量ピルは使用されているプロゲステロンの種類によって、開発された順番に世代で分類することもできます。

第一世代

第一世代の低用量ピルにはノルエチステロン(NET)というプロゲステロンが使われています。出血量が減りやすく、月経困難症のコントロールがしやすいのが特徴です。

代表的なピルは下記です。

第二世代

第二世代の低用量ピルにはレボノルゲストレルというプロゲステロンが使われています。不正出血が起こりにくく、安定した生理周期を作りやすいことが特徴です。

代表的なピルは下記です。

第三世代

第三世代のピルにはデソゲストレルというプロゲステロンが使われています。1相性で、男性ホルモンの作用が最も少ない黄体ホルモンを利用しているため、肌荒れやニキビ改善の効果も期待できるのが特徴です。

代表的なピルは下記です。

第四世代

第四世代のピルは「超低用量ピル」とも言われ、ドロスピレノンというプロゲステロンを使用しています。肌荒れやニキビの改善効果も期待できるうえ、超低用量のため副作用が起こりにくいのが特徴です。

代表的なピルは下記です。

低用量ピルの副作用

低用量ピルにはマイナートラブルと呼ばれる軽微な副作用と、いくつかの重大な副作用が報告されています。

主な副作用

低用量ピルの副作用で多いのは以下です。下記のような症状に気づいたら、医師または薬剤師に相談してください。

  • 悪心・嘔吐
  • めまい
  • ふらつき
  • 頭痛・偏頭痛
  • にきび
  • 浮腫 
  • 体重増加

特に飲みはじめの時期はホルモンバランスの変化によって副作用が起こりやすいことがあります。マイナートラブルと呼ばれ一時的で軽微なものがほとんどですが、継続的に症状が出るような場合は別のピルへの変更も検討しましょう。

重大な副作用

重大な副作用には血栓症やアナフィラキシーがあります。副作用がでることは稀ですが、特に血栓症は肥満や喫煙習慣、年齢(40歳以上)だとリスクが高まりますので該当する方は注意が必要です。

  • 血栓症
    下肢の急激な疼痛・腫脹、息切れ、胸痛、頭痛、四肢の脱力や麻痺、構語障害、視力障害などが見られた場合は直ちに投与を中止し、医師の診察を受けてください。
  • アナフィラキシー
    呼吸困難や蕁麻疹、血管浮腫、そう痒感などが見られた場合は投与を中止して適切な処置を行ってください。

ピルの服用ができない方(禁忌)

下記に該当する方は原則ピルを服用できません。当院でも処方不可となっております。

  • 50歳以上または閉経している方
  • 35歳以上で1日15本以上たばこを吸っている方
  • 前兆のある片頭痛がある方
  • 血栓症の既往がある方
  • 家族に血栓症の人がいて遺伝的に血栓が起きやすい体質の人
  • 過去に肺梗塞・脳梗塞・心筋梗塞など血栓症を起こしたことがある人
  • コントロールできていない高血圧・糖尿病・高脂血症がある人
  • 妊娠中や授乳中の方

※当院では40歳以上の方には原則ピルを処方しておりません。ご了承ください。

低用量ピルの服用方法

低用量ピルは基本的に21錠シートと28錠シートのいずれかです。

21錠シートは偽薬なし、28錠シートは最後の7錠が偽薬(プラセボ)になっています。休薬期間を正しく取る必要があるため、順番通りに毎日服用していれば休薬もできる点で28錠シートのほうが扱いやすいでしょう。

21錠シートの場合

21日間を毎日一定の時間に1錠ずつ経口投与し、その後7日間休薬期間を取ってください。このサイクルを繰り返します。

28錠シートの場合

21錠が実薬、7錠が偽薬となっています。シートの矢印の方向に向かって1日1回1錠を決まった時間に服用してください。このサイクルを繰り返します。

21錠シートのピルと比較して飲み忘れが起こりにくいのが特徴です。

低用量ピルのよくある質問

低用量ピルを飲めばコンドームは不要ですか?

避妊効果が認められている低用量ピルを正しく服用していれば、非常に高い避妊効果があるため、避妊目的では不要と言えるかもしれません。

しかし、ピルには性感染症を防ぐ効果はありません。性感染症は症状に気づきにくく、悪化すると不妊や他の重大な病気につながるリスクもあります。そういった性感染症予防の観点から、低用量ピルを服用しているとしてもコンドームの着用をおすすめします。

長期間低用量ピルを飲み続けても大丈夫ですか?

大丈夫です。低用量ピルは妊娠の機能をなくしてしまうものではなく、ホルモンバランスを調整することで脳に「妊娠した」と認識させて排卵を抑制するものです。服用を中止して数ヶ月すればホルモンバランスも自然な状態に戻り、妊娠可能になります。

将来妊娠を希望していますが、ピルを飲んでも大丈夫ですか?

大丈夫です。長期的に低用量ピルを服用していても、中止後1~3ヶ月かけて自然な月経周期に戻っていきます。反対に、妊活を計画している場合はピル中止後3ヶ月程度は妊娠しにくい期間があるということになるので、ご注意ください。

低用量ピルの服用中に飲酒しても大丈夫ですか?

飲酒による効果の低減などはないので問題ありません。ただし服用してから数時間以内に嘔吐や下痢をしてしまうと低用量ピルの成分が十分に吸収されない可能性があります。また、ピルの飲み忘れにもつながりやすいため、ある程度の時間を空けるか飲酒量を調整することをおすすめします。

喫煙者は低用量ピルを使えませんか?

基本的には使えないことはありませんが、低用量ピルの重大な副作用である血栓症のリスクが高まります。そのため、35歳以上で1日15本以上喫煙する場合は服用不可となります。また、15本に満たないとしても喫煙習慣がある場合は血栓症リスクを考慮して原則的に服用不可となります。

低用量ピルを使用する年齢制限はありますか?

生理が始まっていればピルの服用は可能です。おおよそ10〜12歳くらいから閉経近く(50歳くらい)まで服用できます。ただし、当院では血栓症リスクの観点から、原則40歳以上には処方しておりません。また、喫煙習慣がある35歳以上の場合も原則服用はできません。

参考文献

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